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神の力受けてみよッ!!

走れグンキすまっしゅ☆【初級者中級者向けCOJ】


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グンキすまっしゅ☆は激怒した。

 
必ず、かの邪智暴虐の運営を除かなければならぬと決意した。
 
グンキすまっしゅ☆には環境がわからぬ。
 
グンキすまっしゅ☆は、呉のエージェントである。
 
緑を使い、脳筋デッキを回して暮らして来た。
 
けれどもTLに対しては、人一倍に敏感であった。

 
きょう未明グンキすまっしゅ☆は呉を出発し、野を越え山越え、十里はなれた此このアルカナの市にやって来た。
 
グンキすまっしゅ☆には父も、母も無い。
 
女房も無い。
 
童貞である。
 
十六の、内気な妹と二人暮しだ。
 
この妹は、村の或る律気な一牧人を、近々、花婿として迎える事になっていた。
 
結婚式も間近かなのである。
 
グンキすまっしゅ☆は、それゆえ、花嫁の衣裳やら祝宴の御馳走やらを買いに、はるばる市にやって来たのだ。
 
先ず、その品々を買い集め、それから都の大路をぶらぶら歩いた。
 
 
グンキすまっしゅ☆には竹馬の友があった。スサノオである。

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今は此のアルカナの市で、鬼神をしている。
 
その友を、これから訪ねてみるつもりなのだ。
 
久しく逢わなかったのだから、訪ねて行くのが楽しみである。
 
歩いているうちにグンキすまっしゅ☆は、まちの様子を怪しく思った。
 
ひっそりしている。
 
もう既に日も落ちて、まちの暗いのは当りまえだが、けれども、なんだか、夜のせいばかりでは無く、TL全体が、やけに寂しい。
 
のんけなグンキすまっしゅ☆も、だんだん不安になって来た。
 
 
路で逢った若い衆をつかまえて、何かあったのか、二年まえにCOJを始めたときは、夜でも皆が誰かを燃やして、TLは賑やかであった筈だが、と質問した。
 
若い衆は、首を振って答えなかった。しばらく歩いて老爺に逢い、こんどはもっと、語勢を強くして質問した。
 
老爺は答えなかった。
 
グンキすまっしゅ☆は両手で老爺のからだをゆすぶって質問を重ねた。
 
老爺は、あたりをはばかる低声で、わずか答えた。
 
「運営は、カードを殺します。」
 
「なぜ殺すのだ。」
 
「環境を壊している、というのですが、誰もそんな、環境を壊しては居りませぬ。」
 
「たくさんのカードを殺したのか。」
 
「はい、はじめはカイムさまを。それから、エンジェルビルダーを。それから、アザゼルさまを。それから、ヒュプノスさまを。それから、シヴァさまを。それから、シャドウメイジ様を。」
 
「おどろいた。運営は乱心か。」
 
「いいえ、乱心ではございませぬ。人を、信ずる事が出来ぬ、というのです。このごろは、エージェントの心をも、お疑いになり、少しく派手な盛り方をしている者には、50000APずつ差し出すことを命じて居ります。御命令を拒めばBANされて、殺されます。きょうは、六人BANされました。」
 
 聞いて、グンキすまっしゅ☆は激怒した。
 
「呆れた運営だ。生かして置けぬ。」
 
 
 グンキすまっしゅ☆は、単純な男であった。
 
買い物を、背負ったままで、のそのそSEGA本社にはいって行った。
 
たちまち彼は、巡邏の警吏に捕縛された。
 
調べられて、グンキすまっしゅ☆の懐中からは短剣が出て来たので、騒ぎが大きくなってしまった。
 

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グンキすまっしゅ☆は、運営の前に引き出された。
 
 
「この短刀で何をするつもりであったか。言え!」
 
暴君むっくは静かに、けれども威厳を以って問いつめた。
 
その王の顔は蒼白そうはくで、眉間の皺は、刻み込まれたように深かった。

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「TLを暴君の手から救うのだ。」とグンキすまっしゅ☆は悪びれずに答えた。
 
「おまえがか?」王は、憫笑した。
 
「仕方の無いやつじゃ。おまえには、わしの孤独がわからぬ。」
 
「言うな!」とグンキすまっしゅ☆は、いきり立って反駁した。
 
「人の心を疑うのは、最も恥ずべき悪徳だ。運営は、エージェントの忠誠をさえ疑って居られる。」
 
「疑うのが、正当の心構えなのだと、わしに教えてくれたのは、おまえたちだ。人の心は、あてにならない。人間は、もともと私慾のかたまりさ。信じては、ならぬ。」
 
暴君は落着いて呟つぶやき、ほっと溜息ためいきをついた。
 
「わしだって、平和を望んでいるのだが。」
 

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「なんの為の平和だ。自分のAPを守る為か。」
 
こんどはグンキすまっしゅ☆が嘲笑した。
 
「罪の無いカードを殺して、何が平和だ。」
 
「だまれ、下賤の者。」
 
王は、さっと顔を挙げて報いた。
 
「口では、どんな清らかな事でも言える。わしには、人の腹綿の奥底が見え透いてならぬ。おまえだって、いまに、垢BANされてから、泣いて詫びたって聞かぬぞ。」
 
「ああ、王は悧巧だ。自惚れているがよい。私は、ちゃんと死ぬる覚悟で居るのに。命乞いなど決してしない。ただ、――」
 
と言いかけて、グンキすまっしゅ☆は足もとに視線を落し瞬時ためらい、
 
「ただ、私に情をかけたいつもりなら、垢BANまでに三日間の日限を与えて下さい。たった一人の妹に、亭主を持たせてやりたいのです。三日のうちに、私は村で結婚式を挙げさせ、必ず、ここへ帰って来ます。」
 
「ばかな。」と暴君は、嗄れた声で低く笑った。
 
「とんでもない嘘を言うわい。燃えたAPが帰って来るというのか。」
 
「そうです。帰って来るのです。」
 
グンキすまっしゅ☆は必死で言い張った。
 
「私は約束を守ります。私を、三日間だけ許して下さい。妹が、私の帰りを待っているのだ。そんなに私を信じられないならば、よろしい、この市にスサノオという鬼神がいます。私の無二の友人だ。あれを、人質としてここに置いて行こう。私が逃げてしまって、三日目の日暮まで、ここに帰って来なかったら、あの友人を下方エラッタして下さい。たのむ、そうして下さい。」
 
 
 それを聞いて王は、残虐な気持で、そっとほくそ笑んだ。
 
生意気なことを言うわい。どうせ帰って来ないにきまっている。
 
この嘘つきに騙された振りして、放してやるのも面白い。
そうして身代りの男を、三日目に殺してやるのも気味がいい。
 
人は、これだから信じられぬと、わしは悲しい顔して、その身代りの男をうすしおの刑に処してやるのだ。
 
世の中の、正直者とかいう奴輩にうんと見せつけてやりたいものさ。
 
 
「願いを、聞いた。その身代りを呼ぶがよい。三日目には日没までに帰って来い。おくれたら、その身代りを、きっと下方エラッタしよう。ちょっとおくれて来るがいい。おまえの罪は、永遠にゆるしてやろうぞ。」
 
「なに、何をおっしゃる。」
 
「はは。プレイデータが大事だったら、おくれて来い。おまえの心は、わかっているぞ。」
 
 グンキすまっしゅ☆は口惜しく、地団駄踏んだ。ものも言いたくなくなった。
 
 
 竹馬の友、スサノオは、深夜、SEGA本社に召された。暴君むっくの面前で、佳き友と佳き友は、二年ぶりで相逢うた。
 
グンキすまっしゅ☆は、友に一切の事情を語った。
 
スサノオは無言で首肯き、グンキすまっしゅ☆をひしと抱きしめた。
 
友と友の間は、それでよかった。スサノオは、縄打たれた。
 
グンキすまっしゅ☆は、すぐに出発した。
 
 
初夏、満天の星である。
 
 
第一部 完